Interview
本音で仕事をする、そのためのコミュニケーションを惜しまない。
型ではなく、ベースにある考え方がグローバルなビジネスマンを育てる。
グーグル合同会社 グローバルカスタマーケア部門 チームリード
大内 真樹さん
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創業数年目から、シンク・アンド・アクト(以下T&A)では、世界的インターネット企業の日本支社であるグーグル合同会社で、2017年まで継続して新入社員研修を行ってきました。  その一番最初の研修を受け、現在では部門のマネージャーとなった大内真樹さん。社内での研修も多々あるグーグルで、T&Aの研修は一味違うものとして、今でも印象に残っているといいます。  世界から日本へ、また日本から世界へ仕事をするためのビジネスマンに必要なことは何か。大内さんに、T&Aの研修から得たものについて、お話を伺いました。
まずやってみることから始まる、シンク・アンド・アクトな新卒研修。
ー新卒でグーグルに入られたとのことですが、まずT&Aの研修を受けられた印象としてはどのようなものでしたか?
大内:一言で言うと、衝撃でしたね。入社をした最初は、まずグーグルの製品や文化などを学ぶ研修を受けました。自社に関するものがひと段落した段階で、T&Aさんのマインドセットやビジネスマナーに関する研修を受けました。 私は大学院から新卒でグーグルに入ったので、他社のものとの比較をしてお話しすることはできませんが、想像していたものと全く違っていて。受ける前は、元CAさんなどが来て、挨拶やお辞儀、名刺交換など、社会人としてのビジネスマナーを学ぶと言うイメージでした。期間も2日間と聞いていたので、正直そこまで日数必要ないのではとも思ってました。 でも実際始まってみると、明らかにそのイメージとは違うんですよね。まずマインドセットとして、学生と社会人は何が違うのかということを、ワークショップを通して学んでいく。ビジネスマナーに関するものもありましたが、こちらも何か方法を教えてもらうのではなく、まずやってみて、そこから間違いを見つけて自分で方法を学んでいくというスタンスで、とても面白かったです。
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伊澤:あのコンテンツは、僕らが創業当時、幼児教育をしようと考えていて、そのために作ったものなんです。まずやってみて、自分で気づくことを重視する。でもそれって大人も変わらないんじゃないかと気づいて、新卒研修のコンテンツに取り入れました。
大内:グーグルの人はとてもチャレンジ精神があるということは当時もおっしゃっていただいてましたね。 そして、その研修も2日目の終盤になってくると、これからプロフェッショナルとして働く上で何が大切かというお話があり、それに対してみんなでどう思ったかを共有する時間がありました。結構人数は多かったんですが、みんな思い思いに話していって。 そして最後に、講師としていらっしゃっていた、香水さん、杉村さんから熱いメッセージがありました。それが本当に感動して。僕が感動しいということもあるんですが、泣いてしまいそうな、本当にうるっとくるぐらいのものがありました。そのあとすぐに、「本当に感動しました。またお越しの際はぜひ飲み会など企画させていただけませんか?」とメールをしましたね(笑)。私以外にも同様のメールをした同期が何名かおり、そこから毎年研修のある4、5月などをメインに、飲みをご一緒させていただいてます。
伊澤:マネージャーに昇格されたときも、僕と香水で一緒に飲みに行きましたね。
大内:そうですね、その節はありがとうございました(笑)。
伊澤:新卒研修ですが、アメリカ本社ではそのようなコンテンツはないんですか?
大内:T&Aさんのような研修はないと思いますね。グーグルという会社がどのような会社かということ、担当する製品については教えてもらいます。でもそれは、学生がビジネスマンとしてのマインドセットを獲得することとは少し違うんですよ。なので、私にとっては貴重な二日間でしたし、印象に残ってますね。
伊澤:様々な企業を見ていて、グーグルさんが他の企業と違って一番難しいところは、次の年の新卒の人に、テストの過去問を後輩に教えるように、ワークの内容が全部共有されてるところですね(笑)。なので同じものは絶対使えない。なので根本の考え方は変わらないのですが、来年はどんなワークにしようかを考えるのは、僕らにとってもすごい面白かったです。
社内の文化として、研修が引き継がれていくことが人事の理想形。
伊澤:大内さんにとって、マナーというのはどこまで必要があると思いますか?
大内:マナーはとても大切だと思ってます。グーグルはカジュアルな会社ではありますが、相手を思いやる姿勢、マナーは必要ですよね。 その中で重要なのは、すべての型を学ぶのではなく、大切にされている考え方を知ること。それを知っていれば、日本だけではなく、他の国の社員と会うときなど、全然文化が違う中でも、何がマナーとして悪いとされているのかを調べられたり、自分の気持ちを表す手段を考えられたりします。
伊澤:やはりグローバルな会社でも必要なことなんですね。
ーグーグルというと優秀な方がたくさん入ってきそうなイメージがありますが、そこにギャップや足りない部分は感じますか?
大内:そうですね、グーグルが大事にしている基準があり、それを乗り越えてきた人たちなので、優秀だと思います。ただ新卒に関していえば、学生時代にビジネスをしていたという人は少ないですし、マナーに関していえば、むしろ知識も意識も低い人が多いように思います。日本独自の敬語やマナーは、かたすぎると感じたり、型にはめなきゃいけないことが個人の良さや多様性を尊重していないのではと感じるんですね。 ただ本来マナーとは相手への思いやりを示すこと。日本の文化や価値観を尊重し、同僚やお客様に思いやりを示すことと考えれば、確かに大事だなとなりますよね。業務に入って現実を見て挫折してから対処療法で何かを教えるのではなく、最初にマインドセットを変えることは重要だと思います。
ーそれは大内さん自身マネージャーに昇格されて、教える側、マネジメントする側になったからこそ感じる部分でしょうか?
大内:2017年に部門のマネージャーになったんですが、私のチームは毎年新しい人が入ってくるようなところなので、それはあるかもしれないですね。 少し話は変わりますが、現在は私ともう一人でビジネス部門の研修プログラムを考えて、実施しています。中でもマインドセットの部分は非常に大事だと思っているので、私達の受けたT&Aの研修を参考にしてプログラムを設計しているんですよ。
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伊澤:それはとてもありがたいことですね。僕らは、企業と点ではなく線で、研修ではなく人事コンサルで関わることが多いんです。そうすると、関わる期間が長くなってくることもしばしばで。でも、いつかはその企業の中の人にバトンタッチして去る事が必要だなと考えていて、それを自分たちの力で行う会社が増えて行けばいいなと思ってるんです。 大事なものを採用していただいて、それを続けていただくというのはすごく人事としては理想の形だなと思ってます。
大内:ありがとうございます。 グーグルに入ってくる人の中には、マナーの研修なんて必要ないのではという人もいるんですよ。でもそれは違うぞと。私が新卒の時に実感したこととして、学生から社会人に上がるタイミングで、いかに早くマインドセットを変えることができるかということ、トップダウンではなく自分たちの気づきによっていかに導いていけるかということを重視しています。
限られた時間だからこそ、本音で話せる関係で仕事をしたい。
伊澤:マネジメントになってみて、様々なマネジメント論のようなものがあると思いますが、大内さんにとって、実際にチームをまとめていく、あるいは生きがいを持って働くことにおいて、大事にしていることはありますか?
大内:自分の性格にも関係することですが、お互いのことを深く知ろうとしていますね。職場での関係性を、仕事だけの関係で終わらせたくないし、本音が話せる関係であるかどうかは大事にしています。 たとえば新しい人が4月に入ってきて、これから一緒に働きますとなったとします。まずはじめにすることは、その人がこれまでどのような人生を歩んできたのかを聞くことです。子供の時にこういう経験をしていたとか、何に熱中したとか、何が辛かったとか、そういう話をします。そして、今何を思っていて何をしたいのか、何を考えているのかを聞き、ではこれからどうしていこうかという質問を投げかけることで、自分の中で答えを見つけるということをしていますね。自分と相手がお互いのことを知れたと思えるようになると、信頼関係みたいなものが生まれると思っています。信頼関係が生まれるとお互い本音で話せるようになるんです。お客様のためには何が大切なのかをチーム皆が本音でぶつかれる。 どんなチームが最良かはわからないですし今も模索中ですが、私としては、本音を話せる家族のような関係の方がいいと思ってます。
伊澤:いまのお話の本音ということは、僕も最近感じたキーワードの一つです。最近、大手のIT企業の内定を蹴って、T&Aに入れて欲しいという学生さんが来ました。なぜかと話を聞いたら、僕らがその時していた採用に関する文章を読んでくれてだったんですが、その内容というよりは、その書き方に本音感を感じたと。 どのようにしていたかというと、手書きで作文を書いて載せたんです。僕ららしさを考えてやったのですが、字が汚くても、それを隠すさずに自分の思っていることを書く、そこに本音を感じたと。 結局その子が入るかどうかは一度考えようかとなったのですが、そのようなアクション一つにも本音を感じてもらえて、そういう意味ではコミュニケーションの量ではなく、深く話せるかどうかは重要なのかもしれないと感じますね。
ー最初の研修は本音であることを感じたということですかね。
大内:そこは感じましたね、本音というか、すごい熱量を感じました。
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新卒で大内さんが受け、それを引き継ぎ、マネージャーとして社内の文化にしつつある、T&Aが行ってきた新卒研修。本音のコミュニケーションが、良いチームを生み出す糧になっています。
グローバルな現場で働く中でそれが生きているのは、型からではなく、まず根本にある考え方を大事にしているからであることは間違いないでしょう。