Works
巻き込むことで、生まれる可能性。
企業の縦割りを超える、小回りのマネジメント。
クライアント
NTT西日本 ビジネスデザイン部 IoTビジネス部門 ビジネス開発担当 主査
新規事業の開発は、これから力を入れて取り組みたい大企業も多いことでしょう。シンク・アンド・アクト(以下T&A)が、現在実証実験を行っている、IoTを利用した産業廃棄物の収集効率化事業も、そんな大企業とチームを作り、一から組み立てている事業の一つです。  T&Aという小さな会社が、大企業や行政のプロジェクトに入ることで生まれる相乗効果とは何か。NTT西日本で新規事業開発に携わる安原さんに、事業の全体像と合わせて伺いました。
人を巻き込むからこそ実現する、日本で初めての新規事業開発。
ーまず最初に、プロジェクトの全体像をお教えいただけますか?
安原:まずプロジェクトの始まりは、2016年、T&Aの共同代表の杉村さんと、私の前任である望月が、あるイベントで知り合って、意気投合したことでした。何か新しいことができないかと画策している中で、あるときT&Aさんと繋がりがあった京都府環境部に話を伺いに行ったんです。何か困ってることないですかと。そこで、もっと産業廃棄物を効率的に回収したいという課題が持ち上がりました。それならNTT西日本でもできるのではないかと、センサーの専門家、環境の専門家を巻き込みプロジェクトが始動し、その後プロポーザルを経て、実際の現場の声を拾ったり、センサーの開発を行ったりなどを行いました。 IoT技術とLPWAという新しい通信を使った産業廃棄物の効率化というのは日本で初めての取り組みだったのですが、現在の段階としてはプロダクトはほぼ完成し、コスト面と環境面の効果の検証をしながらデータを集めています。実際に入れてどれぐらい回収のコストが減少したか、効率化によってどれくらいCO2の削減など環境負荷が減ったか、これまで量が少なくて燃やしていたものをまとめることによってリサイクルすることができるかどうかなど、データとして集めているところです。
中峯:新規事業を作るときに、このような形で始まることはよくあるんですか?安原さんがいらっしゃる部門はビジネスデザイン部ということで、企業の中でも特殊なベンチャー気質のあるところですよね。
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安原:いつもはもう少しふわっとしたテーマ、例えば環境問題に関するなんらかのソリューションを考えるといったようなものが上層部から降りてきて、それに対して調査やヒアリングを重ね、仮説構築をして事業をスタートします。なので、このように外部にアプローチして実需から事業を始めることはあまりないですね。
ー外部の人がマネジメントではいるというのはよくあることなのでしょうか?
安原:それもあまりないですね。ただ、私のいるビジネスデザイン部に関していえば、社内のリソースだけでなく、外部の視点を積極的に入れていこうという姿勢はあるので、このような座組を組みやすかったということはあります。我々は通信技術という、全ての業界の足回り、インフラを扱っているので、関わる業界は広いですが、そこから先の各業界の内情などに関してはあまり明るくありません。ですのでそれを社内リソースだけでNTT西日本的に良い事業にするのではなく、業界の深い部分を理解している外部の方を入れてお互いの強みを生かしながら、実需のある、地に足のついた事業を増やしていかないといけないと感じています。
正解がない中で、お互いを高め合うことのできるパートナーとして手を取り合う。
ー外部の視点を増やしていくことの必要性に関して伺いましたが、T&Aはそれに対して何か特定の専門分野を持った集団というよりは、チームの潤滑油のような、プロジェクトを回すという面での関わり方かと思います。いまのお話の中ではあまり現れない役割かなと思いましたが、その必要性というのはどのような部分にありますか?
安原:まず一つは、社外のパートナーを増やす際に、仕事のやりとり自体に明るい人がいる方が全体がスムーズに回ることが大きなメリットです。中峯さんの場合は、学術的な部分であったり、もともと法務省にいらっしゃったので行政の仕事の進め方を理解していたり、我々だけでなく、そのパートナー先の方達にとっても、仕事の進め方を大きく変えなくて良いことで、事業全体がスムーズに進むことが多くあります。我々でカバーできる部分も限界があるので、そのように間に立つ方というのは、異なる業界をつなげる上でこれからも役割は広がっていくと思います。 もう一つは、事業を進めるスピード感です。大企業でありがちなのが、社内だけだと人的リソースも限界があるし、時間もかかるので、他の企業に似たようなサービスを出されてしまったり、新しい技術が出てきてそもそも考えていたものよりも安くて優れたものが出てきたりということです。大企業は承認などでどうしても時間がかかりますから、そこに小回りのきく方が入っていただけると、スピード感が必要な部分はお任せするといったことができます。
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ープロジェクトを主導してるのはどちらなんでしょう?
中峯:どちらが主導というのもあまりないですよね(笑)。役割をそこまで細かく分けていなくて、それぞれの立場によって得意不得意でやることを振り分けています。 今回のような大きな事業は我々だけでは抱えきれないものなので、僕らにもメリットがありますし、一方でNTT西日本さんだけだと先ほどの話のように、変化に対するスピード感や、異分野へのリスクに対する知見がなかったりなど、メリットデメリットを補い合ってプロジェクトを進めています。 問題に対しては一緒に考えて、受発注の関係というよりは、本当にパートナーとして関わらせていただいてます。
安原:外部の方の関わりがあることのメリットというのは、一歩引いた目線で見てもらえるということもあります。自分の頭だけだとそこでの方向性を見誤るんですよ。最初の熱量とかに引きづられたり。そう言ったときに第三者が切り捨ててくれたり、軌道修正してくれるというのは、個人ベースでのありがたさもそうですし、仕事としてそうあるべきなんじゃないかと思います。
中峯:新規事業はあらゆることが常に不安定な状態で進まなければいけないので、見通しが立てにくい。ルーティンワークもないので、都度相談しながら、変化の早い状況に対して最初のの仮説や状況がブレるとどんどん変わっていくので、さっきまで決めてた方向性に、あれは違うのではないかという目線を持つことの重要性は、こういう仕事してると感じますね。何をしなければならないという正解もないですしね。
周囲を巻き込むからこそ生まれる、新たな発見と今後の展望。
ー大企業や行政などの縦割り構造の壁を越えたり、または他企業とのコラボレーションという意味で、どのような人が増えれば面白くなるのではないかと思いますか?
安原:壁って別に越えられないことはないんです。ただ、やはりそれをするためには、そこへのモチベーションが必要です。特定の課題感を強く持ってるとか、新しいビジネスを当ててやるんだということとか、そう言った使命感を持った人。大企業とはいえ、ある程度の熱意と行動でその部分は乗り越えることができると思うので、そのような人が増えるといいですね。大企業はすでに営業チャネルがあったり、そのサービスが良ければ社内投資をできたりと、上手く使えばそのモチベーションを加速することはできると思います。 でも一方で、そのようなモチベーションが初めから必要かというと、周りの人から熱量をもらうという方法もあると思います。僕は情熱というよりは仕事としてきっちりやりたいということもありますが、今回の案件でいうと、はじめはいわゆるゴミというものに、一般廃棄物と産業廃棄物の違いがあることも知らなかったですから。そこから話をしていて、感化されてモチベーションが出てきています。ここ4ヶ月間くらい、相当いろんな業界の方に話を聞きいて、そこへの期待感を感じたことで、感化されている部分も結構あります。みなさん結構話をしてくれるんですよね。そこはNTT西日本という大きな企業である信頼感もあるかもしれません。
中峯:確かに我々の場合は、逆に熱量だけでは現場の声を聞き出せない部分もあります。彼らからすれば、まずこちらに何も期待してないので、向こうとしては情報もってかれるだけのような感じになってしまうと思います。なのでそこはこちらとしても、NTT西日本さんの名前があるからこそできることもあるし、なんなら受付でNTT西日本の中峯ですと名乗るくらいの勢いですね(笑)。
安原:なるほど、でもそこから引き出した情報に関しては、我々だけでは料理しきれないところもあるので、やはり先ほど話したような相乗効果が生きてくるところです。中峯さんには、突然いなくなられると成り立たないですね(笑)。
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ー今後事業は実証段階から、具体的な社会実装フェーズに移っていくと思います。このプロジェクトの今後に関して何か思いはありますか?
安原:まず根本となるセンサーによって溜まっている廃棄物を計測しデータ化するということはだいぶ完成してきています。なのでそれは改善を進めつつ、NTT西日本という大きな会社が、環境に対する責任という意味でもCSRとしてこのプロジェクトは期待されています。コスト的にも企業で採用したいものにしつつ、環境面でも良いものになって行けばいいなと思ってますね。 その上で、この取り組みをもっと進化させていくことや、これから技術の進歩によってできることも増えると思うので、そこでもスピード感を持ってやって行きたいです。
中峯:僕らは自社商品じゃないので難しいのですが、やはり製品の改善と導入の事例を作ることは必要かなと思います。 あとは、これ自体が新しいものなので、我々もどの分野で使えるかわからないところが面白いと感じています。実は現在、今回開発したセンシング技術と全く同じものを使って、農業でも実験が進んでいます。
安原:センサーを置いてものを測るということに対するニーズがある分野というのは、今回発見がありました。そういった発想をどんどんサービスに乗せて広げていきたいですね。
中峯:そうですね、お客さんに使ってもらって、使い方も間口を広げて行けたらいいなと。今後、このサービスが日本だけではなく世界に羽ばたいていってもらえるいいなと思います。
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大きなリソースを持つNTT西日本と、他業界への知見を持ち小回りのきくT&A。そこで生まれたのは、互いの足りない部分を補い、得意な部分を高め合うことで、想定できる範疇でこなすのではなく、新しい価値を見つけ続けるサイクルでした。
この事業が実証実験を経て社会で活躍することはもちろん、この関係性が、また新たな仕事を生み出すことが楽しみです。